みっちゃんの手、ちょっと噛むか?
「みっちゃんの手、ちょっと噛んでいい? そしたらうれしくなって元気出そうやなあ」
みっちゃんはもちろん、すぐに走って逃げていきます。みっちゃんは熱いのだいきらいだから、火のそばもきらいです。痛いの大きらいだから、歯医者さんへは行きません。恐いの大きらいだから、犬のそばにも行きません。一度ベルトのバシンという音を聞いてからは、ベルトをしているという理由だけで、みっちゃんにきらわれてしまうくらいなのです。
「痛いの嫌なんやて」「痛いの恐いからダメなんやって」と言いながら、すぐにいなくなってしまいます。
みかちゃんが亡くなったとき、私は自分で悲しい気持ちをどうしたらいいのかわからなくなりました。子供たちの前なのに、立っていられないくらい悲しくて、その悲しみをなかなか受け止めることができずにいました。放課後も一人教室に残って、やっぱり泣かずにいられなかったとき、ふと気がつくとみっちゃんが家に帰らずに立っていました。「どうしたの?」と尋ねると、みっちゃんは私の目をじっと見つめて言いました。
「山元先生、みっちゃんの手、ちょっと噛むか?」
みっちゃんはもしかしたら、噛まれて恐くなったとしても、痛くなったとしても、私を元気にしてあげたいと思ってくれたのだと思います。私はみっちゃんのやさしさに胸がいっぱいになって、みっちゃんを抱きしめました。それから、せっかくなので痛くないほどみっちゃんの手をちょっとだけ噛みました。そしたら、悲しい気持ちがなおっていったようでした。みっちゃんはそんなやさしい女の子でした。
以上前にも紹介した 山元 加津子さんの『違うってことはもっと仲良くなれること』から引用しました。

じっと先生の目を見て、先生を元気にしてあげたいという思いは、いつも怖がっていたことも逃げないでやってみる気にさせたようです。
何らかの理由で、自分はこれをやらないと言い聞かせていること、「これは嫌いだから私には無理」と思っていることも、いざとなったらどっちだっていいことに変わるかもしれません。
いまは、そんな言い訳をしていられる余裕があるから、そうしているだけ。
そんな回避行動は、まわりの人との関係でもパターンを作り上げてしまいます。
これを言われたら、私は絶対許さない。
こういわれたら、こう言い返してやる。
こんなこというなんて、信じられる?!
このような構えは、相手の引っかけを見つけたらすぐに、反応を始めてしまいます。
本当は、そんなことを言いたいわけでもないのに、なんでこんなことを言ってしまうのだろう。
途中でそう思っても、いったんそのパターンに入り込むと引くに引けなくなる。
まるで、申し合わせた脚本を演じるように、相手の反撃を期待し、自分の役割を演じてしまうのです。
しかし、そんなうそに飽き飽きしたら、そんないつもの嫌なやりとりを本気でやめたいと思うなら、すくなくとも自分の方はパターンをぶちこわすことが出来るわけです。
それは一時的に恐かったり不愉快な感じがするかもしれません。
なぜかと言えば、いままでのパターンに守られて嫌な感じを持ちながらも、予期しないことが起こるのを予防してきた方法だからです。
いつもの嫌な結末を予期しながらも、新しい関係になったとき何が起きるのか想像が付かないから、恐くてパターンを壊せないでいるのです。
それは非常に根深い場合もあるかもしれませんが、たいてい何かきっかけさえあれば「わかった、やればいいんだろ!」と開き直れる程度のことが多いのです。
みっちゃんが「先生がかなしそう、元気にしてあげなくては」と思ったとき、いつもの怖さが消えていったのです。
すくなくとも自分の側ではゲームに参加しないと決めたら、自分を正当化する言い訳を全部却下してみる。
そして、相手の言葉には載せられないようにします。
相手が何を言っても、その「言葉」は聞こえてこない。
自分に感心のない商品名は、CMがいくら連呼していても音にしか聞こえないように、相手の「言葉」はいつもの意味を持って聞こえてこないようにするのです。
自分の側で、自分を正当化する言い訳を用意して身構えているから、相手の「言葉」は格好の餌になってしまうのです。
言葉が自分にダメージを与えるのは、自分の方に弱みがあるからです。
言葉が自分をいい気分にしてくれるのは、やっぱり自分の方でそれを聞きたがっているからです。
それに反応してスイッチを入れてしまえば、いつものパターンに入り込んでお互いが譲れなくなってしまうのです。
これはいつもの「あれ」だと気が付いたら、スイッチを自分で切ってしまうことです。
それが、「みっちゃんの手、ちょっと噛むか?」というような心に響く言葉を生み出してくれます。
実は、意地を張らなければ、誰でももっとやさしくなれるのです。
【引用文献】
『違うってことはもっと仲良くなれること』
著者: 山元 加津子 / 樹心社 / 2003-04 /
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