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いやな気分を粉砕する(論理療法2)

前回に続いて論理療法のご紹介と、最後に子どもの叱り方の例文を挙げておきます。
例文については「ずっと、何だって、僕が悪いんだ(論理療法1)」も参照して下さい。


まずセリグマン等がABC思考法と呼んでいる、論理療法の基本理論を見てみましょう。

人の悩みは出来事そのものではなく出来事の受け取り方によって生み出されるものであり、受け取り方を変えれば悩みはなくなるというのが基本的なスタンスである。そして、それはABC理論とイラショナル・ビリーフに集約される。
ABC理論

A:Activating event(出来事)
B:Belief(信念、固定観念)
C:Consequence(結果)

出来事があって、結果があるのではなく、間にビリーフによる解釈があるという考え方である。とくに不合理な考えによる解釈をイラショナル・ビリーフと呼び、それを粉砕することを目的とする。

D:Dispute(論駁)
E:Effect(効果)

ABCのあとにの二つを加えて、ABCDE理論と呼ぶこともある。

イラショナル・ビリーフ

「失敗してはならない」「すべての人に愛されなければならない」「世の中は公正でなければならない」などという思いを持っていると、それらが満たされなかったときに悩むことになる。イラショナル・ビリーフは以下のような特徴がある。

* 事実に基づいていない
* 論理的必然性がない
* 気持ちを惨めにさせる

イラショナル・ビリーフは願望(?ねばならない、?であって欲しい)と事実を混同することから起こっている。このような混同を論理的に否定し、ラショナル・ビリーフ(合理的信条)へと変えてゆくのが論理療法の役割である(「文章記述を書き換える」という表現をする)。ラショナルビリーフは

* 事実に基づいている
* 論理性がある
* 人生を幸福にする

ラショナル・ビリーフの例は「失敗しないほうがいいが人間だから失敗することもある。失敗から学ぶべきである」「人に愛される・愛されないとは関係なしに具体的になにかをするべきである。その結果人が愛してくれればありがたいし、愛されなくとももともとである」などである。

端的に言ってしまえば、「?ねばらならない(must)」ではなく、よりマイルドであると言われる「?であるにこしたことはない(should)」という文章記述の書き換えである。

論理療法 - Wikipedia



次に具体的なABCDEの例として、セリグマンが「大人のための悲観志向撃退の練習」で取り上げているものを見てみましょう。

【A(うまくいかない状況)】
新任教師の私は、中学二年生のクラスを農場に連れて行って農業を学ばせようと、ずいぶん時間をかけて準備をした。反対するベテラン教師もいたけど、私は子どもたちに何か特別なことをしてあげたかった。農場に到着すると、生徒たちはてんでに勝手なふるまいを始めた。牛にチューインガムをやろうとした子もいたし、干し草の山にかくれて女の子が二人、たばこを吸っているところを見つけた。もう少しで火事になるところだったわ。男の子たちのグループは卵を盗もうとしていた。

【B(考えや思い)】
なんてひどい状況でしょう!私ったら、本当にばかな世間知らずなんだわ。校長はきっとカンカンに怒るでしょう。これからは規則どおりにやるわ。今後はこのような”青空教室”はナシよ。

【C(結果)】
私はとてもきまりが悪かった。月曜日になっても学校へ行きたくなかった。心のなかで、最悪の事態が次から次へと起こることを想像するのをとめることができなかった。

【D(反論)】
私は大げさに考えすぎている。確かに、何人かの生徒にはお手上げだったわ。でも、ほとんどの生徒たちはちゃんとしていたし、とっても楽しんで、たくさんのことを学んだじゃない。あの実地見学を計画したのは、私に創造性があったからよ(代わりの考え方)。
やってみるのはばかげたことではなかったわ。私のような若い教師こそが、ちがいを生み出すことになるのよ(代わりの考え方)。それに、なぜ校長が怒らなきゃいけないの?私は大きな問題になる前に、すべてを抑えることができたじゃない(証拠)。校長は、次回はお目付役をもっとたくさん連れていきなさいというかもしれないけど、それだけの話だわ(脱破局化)。今回の件についての短いメモを書いて、次回はこのようにやり方を変えます、と校長に伝えようかしら(対応計画)。

【E(元気づけ)】
気分がだいぶ明るくなった。学校へ行って、その見学旅行について話すことも恐ろしくなくなった。確かに、もっとスムーズにいかなかったのはがっかりだったけれども、だからといって、恐れて新しいチャレンジをやめることはなかった。



遠足2


セリグマンはこの後、自分自身の例で練習してみましょうということで、反論の質問ポイントを上げています。

1.その考えが正しいという証拠は何か? それが正しくないという証拠は何か?
2.この状況を別の見方で見るとどのようになるだろうか?
3.起こりうる最悪のことは何だろうか? その確率は?
4.起こりうる最善のことは何だろうか? その確率は?
5.最も起こるであろう結果は何だろうか?
6.自分の対応計画はどのようなものか? とくに最も起こりうる結果に対しての計画は?


以上引用が多くなりましたが、「論理療法」という心理療法は、現在よく用いられている「認知行動療法」の先駆けとなる流れを作りました。

この療法は、それまでの時間のかかる精神分析から、短期間で効果を挙げたいと工夫された背景もあり、理論も単純ですぐに理解でき個人で利用することでも充分役に立つ思考方法を提供してくれます。

どう考えていいか分からなくなったときなど、自分の考えを整理してみるのに利用すれば、非常に効果的だと思います。

特に、自分のB(おもいこみ)に気づくことは、どういう考え方を取るにせよ重要であると考えられます。

また、気分に浸ること、考えること、行動することはそれぞれが密接に結びついていて、実際にはどれかが単独で行われるものではないということに気づかせてくれる理論でもあります。

ただBをどのように扱うかは、いろいろ意見の分かれる所でしょう。
エリスの著作をみると、やはりエリス(あるいは文化的な背景)の影響がないとは言えないでしょう。
非論理的(イラショナル)な思考から脱却したあと、どこに行き着くかも重要であり、そのあたりは論理療法では多分にプラグマティックというか実用的な利益を重視するものです。

もちろん論理療法にしたがって方向転換することが、どうにもならない落ち込みから救ってくれることは充分考えられます。
必要に応じてうまく使っていけば、普段の生活にもすぐに生かせる思考方法となるでしょう。



最後に前回の続きとして、子どもを叱る場合に悲観的な見方に導かない着眼点を載せておきます。

叱る母親


《就学前の子どもを叱る》
◎永続的な叱り方(悲観的)
「トミー、どうしたっていうのよ?あんたは本当にいやな子なんだから」
◎変えられる叱り方(楽観的)
「トミー、きょうのあなたの行動は本当によくなかったわね」

◎永続的な叱り方(悲観的)
「私が留守の間、あなたは泣きっぱなしだったとお姉ちゃんがいっていたわ。本当に神経質な子どもなんだから」
◎変えられる叱り方(楽観的)
「私が留守の間、あなたは泣きっぱなしだったとお姉ちゃんがいっていたわ。私からはなれているのがとってもつらいのね」

◎永続的な叱り方(悲観的)
「おもちゃを片づけなさいといったでしょ。どうしていつも、私のいうことを聞かないの?」
◎変えられる叱り方(楽観的)
「おもちゃを片づけなさいといったでしょ。なぜいわれたことをしなかったの?」


◎全面的な叱り方(悲観的)
「あなたは悪い子ね」
◎限定的な叱り方(楽観的)
「あなたは妹をいじめすぎるわよ」

◎全面的な叱り方(悲観的)
「あなた、スポーツに関してはお母さんの血をうけついでいるのね。私はスポーツ、まるでだめなのよ」
◎限定的な叱り方(楽観的)
「ボールから目をはなさないようにしなくちゃ」

◎全面的な叱り方(悲観的)
「彼女はほかの子どもと遊びたがったことが一度もないの。とても恥ずかしがりやでね」
◎限定的な叱り方(楽観的)
「彼女は、子どもたちのグループに入っていくのに苦労するんです」


◎内へ向かわせる全面的な叱り方
「あなたは運動、だめね」
◎内へ向かわせる限定的な叱り方
「もっとボールを見なくちゃ」

◎内へ向かわせる全面的な叱り方
「あなたたちって、本当に自分勝手なんだから」
◎内へ向かわせる限定的な叱り方
「あなたたちは、もっとみんなで使うようにしなくちゃいけません」

◎内へ向かわせる全面的な叱り方
「この部屋はまるで豚小屋じゃないの!本当にだらしないんだから!」
◎内へ向かわせる限定的な叱り方
「この部屋はまるで豚小屋じゃないの!散らかしたら片づけなくてはいけません」



「引用」
「つよい子を育てるこころのワクチン―メゲない、キレない、ウツにならないABC思考法」
マーティン セリグマン他 ダイヤモンド社 / 2003-09



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こんにちは!

子供への叱り方、ちょっとした事で違うんですね~。
今日は休日なので、子供と一緒にこの文章を読ませていただきました。叱り方の違いについて、とても納得していましたよ^^
でも、「この部屋はまるで豚小屋じゃないの」というところはうけていました(^^)

人の悩みは出来事の受け取り方に生み出される、という点にも納得していました。

こんにちわ^^

いつも楽しく読ませて頂いています。
読み逃げが多くてすみません^^;

私は、この全面的で悲観的な叱り方を
母親からずっとされてきた気がします。
なので、子供の頃の【B(考えや思い)】が、
暗い思いで残ってしまっています。

でも幸い、大人になってからは、周りに恵まれ
【B(考えや思い)】が、前向きになり現在に
至っています。
子供の頃を思い出すと、相変わらず暗くなるので
楽しかったことだけをイメージするようにしています。
これで何とか心の状態を保っていける感じです^^b

最後の
「この部屋はまるで豚小屋・・・」
のところで、部屋を見渡してしまいました(笑)
片付けなきゃ!

Re: こんにちは!

> 子供への叱り方、ちょっとした事で違うんですね~。
> 今日は休日なので、子供と一緒にこの文章を読ませていただきました。叱り方の違いについて、とても納得していましたよ^^
> でも、「この部屋はまるで豚小屋じゃないの」というところはうけていました(^^)
>
> 人の悩みは出来事の受け取り方に生み出される、という点にも納得していました。

引用した本は子ども向けにマンガを見ながら考えるワークとか、いろんなワークシートが入っていて役に立つ本だと思います。
この著者は、楽観志向と悲観志向を研究している方のようで、論理療法にプラスしてその特徴が現れているようです。

親の叱り方というのは、やはり親の人柄が自ずと現れるものですから、テクニックだけでカバーできるものでもありません。
しかし、テクニックとはいえ、知っているかどうかで大きな違いが出るだろうと思います。

セリグマンはまず親自身が自分で理解して、自分に適用してみることだといっています。

Re: こんにちわ^^

> いつも楽しく読ませて頂いています。
> 読み逃げが多くてすみません^^;
>
> 私は、この全面的で悲観的な叱り方を
> 母親からずっとされてきた気がします。
> なので、子供の頃の【B(考えや思い)】が、
> 暗い思いで残ってしまっています。
>
> でも幸い、大人になってからは、周りに恵まれ
> 【B(考えや思い)】が、前向きになり現在に
> 至っています。
> 子供の頃を思い出すと、相変わらず暗くなるので
> 楽しかったことだけをイメージするようにしています。
> これで何とか心の状態を保っていける感じです^^b

ちょうど次のテーマで過去をどう扱うのかということを
考えていました。
まだ何となく曖昧ですが、緊急の対処は別としても、
本質的なものは何なんだろうと考えています。

まあしかし親というのも完璧な人間ではないので、自分を維持するためには
子どもにとってマイナスな影響を与えることは仕方のないことだといわざるを得ませんね。
あるべきことと、実際にあることは違うわけで。

Re: こちくんさん

> 最後の
> 「この部屋はまるで豚小屋・・・」
> のところで、部屋を見渡してしまいました(笑)
> 片付けなきゃ!

豚小屋ってどういう部屋をいうんだろう?
とか、豚はきれい好きと聞いたことがあるような気がしたので、
実際どうなのかネットで調べてみたら、こんなおもしろい話がありました。

Tsugumiさん引用させていただきました。
-----------------------
そこでだんな様に

私「なんでイギリスでは汚い部屋をPigstyっていうの?」

だんな様「それはね。豚はとってもきれい好きなんだけど・・毛が短いから寒さにとても弱い。

     そこで豚は身体に泥(mud)を体中に塗りつけて寒さをしのぐんだよ。。

     その泥塗った姿が汚れているって見えるんだね。きっと」


私「へ~~!そうなの?面白いわね。」

そういえばだんな様の生まれ故郷イギリスは養豚のさかんなところ


豚小屋  Pigsty - ブログは早起きに限る! - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/chi368001/60240716.html
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