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プラトン

自然哲学者のひとり、アナクサゴラスは、自然のものを小さなものに分解すると、目に見えないものになるが、この小さな要素の一つ一つにも、全ての要素の元になるものが含まれているはずだと考えました。

これは、現在の科学で、私たちの身体が、細胞から出来ていて、体細胞の一つ一つには、身体全体に関する、おびただしい情報が書き込まれている、という考えにも通じるものです。

また現代では、ホログラフィーの原理を使えば、どの部分をとっても、全体の立体象を映し出すことが出来るといった技術もあります。

パルテノン神殿

しかし、このような部分に全体が含まれるのとは、全く違った方向で、現実の世界と理想の世界を思い描いたのが、ソクラテスの弟子である、プラトン(BC427?347)でした。

プラトンは、現実の世界は、常に変化していて、基準になる考えは、時代や社会のよって「流れ去る」ものでしかないというソフィストの考えや、いや不変の基準というものは存在するというソクラテスの考えの両方に関心を持ちます。

そこから、なんとか「本当の世界」をとらえようとします。

プラトンは、感覚世界では、全ては時間と共に、浸食され「流れ去る」ものしか見えないが、それと同時に時間を超えた、永遠で不変な型が存在するはずだと考えました。

感覚の世界では、たとえば馬という動物がいますが、馬は個体差はあるものの、必ず馬として代々生まれて、受け継がれていきます。

                   馬1


ソフィストたちの、元になるものが組み合わさって、様々なものに変化するという考えでは、どうして馬は、いつでも馬という形で生まれて、また存在し続けるのか、といった問題を完全に説明できているとは言い難いのです。

そこで、元になる原子のようなものだけではなく、それを形作るための、元になる型のようなものが、何かあるはずだと考えたのです。

永遠で不変な型とは、物質的なものではなく、精神的というか抽象的なひな型であり、私たちの身の回りにあるものの上か後ろには、限られた数の型が存在すると考えます。

プラトンは、この感覚的に見えるものの背景にある型を「イデア」と名付けました。

そして、自然で出会うさまざまな現象の、原型になるイデアが存在する世界「イデア界」が、感覚の世界の後ろにあり、それこそが本当の世界であると考えたのです。

そういわれれば、私たちは、実際には目で見ることが出来ない、抽象的なものを、実際に存在するかのように言葉を使って共有しています。

簡単な例で言えば、あなたが「三角形とはどんなもの?」と聞かれれば、こういうものですと言って、紙に三本の線分をつなげて、三角形の図形を描きます。

                  幾何学授業


それを見ることで、相手もこれが三角形というものかと理解します。

しかし、紙に書いた三角形の図形は、実際には理想の概念である三角形ではありません。
概念としての「線」は太さを持たないのですから、紙に書かれた「線」自体がすでに線ではないのです。

紙に書かれたものは、理想の概念である三角形そのものではないし、そういう意味では、誰も概念である三角形を、視覚でとらえることは出来ないのです。

しかし、私たちは「三角形」という言葉を使えば、共通の理解を持つことも出来るし、幾何学の定理を、証明をしてみせることさえ出来るわけです。

プラトンは、このように現実を、曖昧で不完全な感覚でとらえている「感覚界」と、理性を働かせればとらえることが出来る、永遠で不変なものが存在する「イデア界」の二つに分けて考える訳です。

さらに、この考えを人間の存在にも当てはめて、私たちは、肉体に縛られた、感覚界に属する部分と、それとは別に、物質的ではない不死の魂が存在しているのだと考えます。
そして、理性は魂に住んでいて、イデア界をのぞくこともできると考えました。

また、この考えをさらに進めて、魂はかつて、イデア界に住んでいましたが、私たちの身体に降りてきて、人間の身体として目を覚ました時には、かつて住んでいた世界の完全なイデアは忘れてしまうのだといいます。

これは、分かりやすく例えてみると、私たちはかつて完全な理想の世界に住む、魂としての神様でしたが、人間の肉体を借りて、そこに住むようになると、神様であったことを忘れてしまいます。

イデアについては、不完全にしか覚えていませんが、たとえば馬という動物を見れば、それが馬であり、どのような性質のものかがわかる程度には、イデアを思い出せるのです。
そして、時として神様だった時のこと思いだし、魂の本当の住まい(イデア界)へのあこがれを思い起こすのです。

プラトンは、このあこがれを「エロス」と呼びます。

魂がもともとの源への愛のあこがれを感じるのが、エロスだというわけです。

                  片膝をつく天使

私たちが、普段見ている現実は、不完全なイデアなので、いわばイデアの影だけを見ているようなものだと、プラトンはいいます。

このことを、「洞窟の譬え」で説明しています。

私たちは、洞窟に縛り付けられていて、目の前の壁に映し出されている実物の影だけしか見えないのです。

じつは、その後ろには現実の存在があり、その背後には光源となる火が燃えているのです。

そんななかで、ある人が勇気を出して、後ろを振り返って見るのです。

そして、そこには、影などではない、リアルな本物の世界と、影を作り出していた光の世界があることを、発見してしまいます。

かれは、洞窟を抜けだして、外の世界に飛び出します。

今まで見ていたものは、全て偽物で、本物の世界の影でしかなかった。

本物の世界は、なんと素晴らしいものだ、というわけで、彼は、まだ洞窟の中に閉じこもっている仲間の所へ戻って、この発見を知らせ、本物の世界のすばらしさを説きます。

しかし、洞窟の中にいる人達は、目の前にある影こそが本物だと信じていますから、彼のたわごとには耳を貸しません。

新しい世界の発見者は、本当だから見に行こうと、主張しますが、結局、とんでもないことを言う危険な存在だ、といって彼らに殺されてしまうのです。

プラトンは、毒杯を仰いだ、彼の師であったソクラテスを思い描いていたのでしょう。

プラトンは、このほか国家論なども説いていますが、ここではイデアの世界の説明までということで、終わらせていただきます。

哲学史を振り返って見ることは、現在の私たちの常識が、実はどのような考え方から影響を受けていたのかを、再発見することが出来ます。

また、現在では主流でなくなった考え方に触れることは、現在の考え方の行き詰まりを解決するヒントになるかも知れません。

これが正しいと押しつけられた考え方から、自由に自分で考える力を、取り戻すことも出来るかも知れません。

たとえば、プラトンが言うように、本当に正しい事はイデア界にあって、私たちは影しか見ていないのであれば、どっちが正しいと議論することには、限界があるのだという認識も出てきます。

いろんな考えを、鵜呑みにせずに自分で考えてみれば、人が考えることの限界を知ることにもなります。

これは一種のパラドックスですが、

 つまらないことを考えたくなければ、出来るだけいろんな考え方を、自分で考えてみよう。



参考
ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン ゴルデル 日本放送出版協会 (1995/06)
※哲学者の年代はソフィーの世界の記述にしたがっています。



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