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10人目の男

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10人の男たちが大きな河を渡って向こう岸までたどり着いた。

そのひとりがみんな無事だったのか確かめようと、男たちを数え始める。

「大変だ!9人しかいないぞ!」
「誰かがまだたどり着いていない、助けに行かないと!」

他の男が確認する。「1,2,3、...、9」

「ホントだ。ひとり足りないぞ!きっと溺れてしまったんだ。」

次々と男たちは数を数えるがひとり足りない。

「大変なことになってしまった!」

自分自身を忘れている男たちは、失ったひとりを見いだすまで、完全な世界を生きることが出来ない。

私自身がそこにいることを、なぜか無視してしまう。

ある人は、自分には存在する価値がないと思って、その存在を消してしまう。

別のひとは、世界は自分の中にあると思っているため、自分自身が見えなくなる。

そこに、旅人が通りかかった。
騒いでいる男たちに声をかける。

「何かあったんですか?」

「かわいそうに10人いたのに、ひとりがたどり着いていないんです。きっと河に呑まれてしまったんだ。悲しくてみんなで泣いているところです。」

「それは大変なことでした、...
しかし、あなたたちは全部で10人いるようですよ!」

「そんなはずはない、みんなで数えてみたんだ。誰が数えても9人しかいない」

「そちらの方から、番号を唱えてみてください。」

10人目の男が「10」と数えて、はじめて自分の存在を思い出した。

「そうだ、私がいたんだ!自分を忘れていたから、こんなに悲しい目に遭ってしまった。」


10人目の私を、本当に見つめているだろうか?

私自身が訴えている声をちゃんと聞けているだろうか?

なにか物足りないのは、私自身を忘れているからだ。

「そんなことは、他の9人は望んでいないだろう。だから私は消えてしまおう。」

そう思ってはいないだろうか?

「あの人が許せない。あの人がいなくならないと、耐えられない。だからそれまで、私は存在しないでいる。」

「望んだって、私の望みはいつも叶えられない。だから私は自分の願いは考えてはいけないのだ。」

10人目の私が生きられるときが来るまで、私は待っているんだ。

その時が来たら、私を生きよう。
その時が来たら、私は自分の望みを考えてもいいのだ。
その時が来るまで、私は自分であってはいけない。

私はいつまでも、自分自身でいてはいけない。
許されないことをしてしまったからだ。

私が人数に入らないのは、10人のひとりだと思えないからだ。
それは、自分だけは他の9人とは違うと思っているから起こる。

皮肉にも「私という存在も、10人の中のひとりに過ぎない。」と思えたとき、

私だけを特別扱いしないから、良くも悪くも自分をひとりとして認められるようになる。

作り上げた「私」という存在を消したとき、本当の私を表に出すことが出来るようになるのだ。

それまでは、自分の本当の思いは、「私」によって生存権を握られてしまう。

「私がそんなこと思うわけないじゃない。」
こう宣言する「私」に、自分を奪われてしまわないようにしよう。

私も10人の中のひとりに過ぎないと思えたとき、自分を人数に入れる事が出来る。

それほど私たちは自分への評価が低いことを、自分のまわりの人で観察してみればわかるだろう。

自己評価の低さが、本当の自分でない「私」をせっせと作らせているのだ。

ありのままの自分をそのまま見られたとき、それを受け入れたら、
作り上げてきた「私」は役割を終えることが出来る。

「いままでつらかったんだよ。わたしがここにいると言えなくて!」

「ときどき顔を出すことはあっても、すぐに先にやることがあると言って忘れられてしまった」

「私」が、つまりエゴが、消えたとき、
世界は穏やかになり、
本当に世界は、わたしのためにあると思える時が来るだろう。

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